4月4日、マカオの不動産マーケットは新たな時代に突入した。この日、マカオ政府は投資移民ビザの新規受付を停止。マカオの不動産は、ビザというエサなくしても十分に成長できるという政府の自信が現わされた。 東京の新宿区と渋谷区を足した程度の面積に、2600万人の観光客が押し寄せ、ラスベガスを上回る世界一のカジノ売上のあるマカオ。50万人が暮らす「アジアのラスベガス」はアジアでも有数の豊かな街だ。税金は香港よりも安く、医療や教育も無料。この楽園の住民になろうと、マカオに不動産投資をすると発給される投資移民ビザに多くの人々が殺到した。 しかし、「ビザだけが目的」な移民希望者は安価な住宅を買い漁る。結果として、低所得者向けの住宅の値段が高騰した。マカオ政府はビザの新規受付を停止するとともに、低所得者向けの公営住宅の供給を発表。安価な不動産への投資を抑制し、高級物件に投資を誘導する意図だろう。 なお、ビザの受付停止は新規分のみ。これまでに受付済で審査予定の約4000件については、影響は受けないと政府発表は強調している。過去にさかのぼって受付済のものをキャンセルするといった無茶はしない。ウェスタン・スタンダードに基づく行政はマカオの魅力の1つ。ポルトガル領時代の法制度が特別行政区として50年間維持される。ちなみに受付済の投資移民ビザの処理だけで3年ほどを要する見込み。受付停止による不動産市場への影響は限定的で、低所得者向け住宅の価格下落が予想されている。 今回の政府の決断の契機の背景には、マカオの不動産市場の「ひとりだち」がある。返還の混乱やSARSの影響で観光客数が落ち込んでいた頃と、現在のマカオは、まるで違う国。今や急成長の約束された楽園だ。不動産に関しても、成長する基本的要因が見事に揃っている。もはやマカオの不動産に、ビザ制度などの政府の後押しは必要ない。 2007年後半にはラスベガス資本の3000室のベネシアン・カジノ・リゾートが10万平米の巨大なイベント施設とともに開業する。「6つ星」ホテルのクラウン・マカオの開業も間近だ。 ホテルの客室供給は2010年までに2万4000室、旅行者あたりの滞在日数は1.23日、旅行者数は3600万人と予想される。世界一の座にあるカジノ売上高は、ますますラスベガスを引き離すだろう。すでに1人あたりGDPでは香港を抜いているというマカオの強い経済成長は、観光業とともに急成長を続けるだろう。実体経済が成長している国で、不動産が成長しない理由は考えにくい。日本のような経済成長が一段落している国とは事情が違う。 長期滞在者やイベント出展者、ホテルや店舗の管理職クラスといった人々への住宅ニーズの高さは、誰にも予想がつく。現在、不動産の価格も売買価格が上昇傾向にあるだけではなく、賃貸住宅の価格も上昇が加速ぎみだ。新規開業するホテルが従業員の募集や研修を開始したことで、強力な実需がうまれている。実体経済や売買・賃貸のバランスが崩れた状態がバブルといわれるが、売買価格と賃貸価格が互いに追いかけるように上昇しているマカオの市場は、健全に発展しているといえる。 しかもマカオの土地は狭く、埋め立てのできる余地も少ない。ラスベガスの成長を、ニューヨークのマンハッタン島で行っているようなものだ。このため希少性という値上がり要因もある。 土地が少なければ値段はあがる。日本でも、東京の港区のような「限られた場所」はバブル時よりも高い。どこからでも10分もあれば空港や中国国境に行けてしまうマカオは、その全域が値上がりする「限られた場所」といえる。そのうえ、カジノやホテルの建設が多い半面、高級住宅の供給は年に数プロジェクト程度と数も少ない。 外貨の持込・持出への規制がなく、外国人の不動産私有が可能。不動産の売却益は無税というのもマカオに不動産投資が集まる背景にある。また、建設前の物件による短期売買も盛ん。たとえば4000万円の物件であれば、初年度に払う代金は約3割の1200万円。これを次年度の支払前に15%増で売れば1200万円の投資で600万円の利益。投資利益率50%となる。実際、マカオの不動産は、年率5%から20%の範囲で上昇傾向が続いている。 値上がり傾向とはいえ、マカオの不動産の価格帯は香港の40%程度。まだまだ成長余力が大きくみえる。2010年頃には香港とマカオを結ぶ自動車橋が着工する予定。マカオと香港が自動車で行き来できるようになったときに、マカオの不動産価格が、香港より安いままだと思えるだろうか。 逆に、香港という投資欲の強い街の隣にあるマカオの不動産価格が、なぜ未だに香港よりも安いのか。マカオが「フジテレビができる前のお台場」状態だからだ。フジテレビに相当するのが、ベネシアンなどのラスベガス系カジノリゾート。開業すれば香港の人々のマカオへの見方は一変し、投資熱も加速しそうだ。しかし、開業前の現時点では、香港の人々にとってのマカオは、かつての田舎町のままなのである。完成間近のベネシアンの威容を目にした香港人は驚愕を隠さない。投資ビザの受付停止によって「よちよち歩き」から「ひとりだち」に成長したマカオの不動産。ベネシアン開業による香港人の「目覚め」で一気に飛翔する日が近づいている。